M&A におけるアーンアウト条項

マネックスグループによるコインチェック買収
マネックスグループは仮想通貨の流出がおきた交換業者のコインチェックを36 億円で完全子会社化すると発表しました。ただ実際の買収額はこれにとどまらない可能性が高いです。コインチェックは今後の業績予想が難しく、追加で買収対価を払う仕組み「アーンアウト条項」が定められています(日経新聞2018 年4 月6 日)。コインチェックは今年1 月、約580 億円分の仮想通貨を流出させ、大きな社会問題となりました。今後はマネックスグループの傘下で経営を立て直すことになりますが、マネックスグループは将来のリスクをおさえて、次世代フィンテック分野への足がかりを得たとの見方もあります。


アーンアウト条項
マネックスグループIR によると、取得価額36 億円に加えて、今後3 事業年度の当期純利益の合計額の二分の一を上限とし、一定の事業上のリスクを控除して算出される金額が追加で発生する可能性があるとしています。このような条件付取得対価を定める条項はアーンアウト条項と呼ばれ、IT 企業の買収など、業績の予想について互いの合意が難しい場合に、特に海外のM&A マーケットでは広く活用されています。株式取得の対価においてアーンアウト条項を活用する場合、日本基準とIFRS の会計処理の相違、税務上の処理に留意する必要があります。


日本基準(企業結合会計基準)における会計処理
アーンアウト条項における条件付取得対価が買収後の将来の業績に依存する場合には、対価の交付または引渡しが確実となり、時価を合理的に算定可能となった時に、対価を追加計上し、のれんを追加的に認識します。


IFRS における会計処理
マネックスグループの会計基準はIFRS です。IFRS では、条件付取得対価は、取得日時点の公正価値で測定し、取得の対価に含めて取得対価の一部として認識します。その後の会計期間で条件付取得対価の当初の公正価値に変動が生じても取得日後の事象に起因する変動については、当初の条件付取得対価の額を変更しません。すなわち、取得日時点で公正価値により計上された条件付取得対価の金額は、原則として変更されず、減損損失を認識しない限り、のれんの金額も変動しません。マネックスグループにおいても、条件付対価の取得日の公正価値を算定することになるでしょう。
IFRS では、条件付取得対価を取得日における公正価値で認識するのに対して、日本基準では交付または引渡しが確実となり、対価の算定が可能となった時点で計上することから、日本基準のほうが、測定、認識のタイミングが遅くなります。


税務上の取扱い
税務上は、条件付取得対価の取扱いについて特別に定めた法令は特に見当たりません。有価証券の取得価額に関する法令により実務処理を想定しますと、一定の条件を満たした場合に追加的に支払われる対価があくまで取得対価の調整である限りは、有価証券の取得価額の増額として処理し、損益としての処理は不要となります。実際の実務処理においては、追加的に支払われる対価の性格を明確にしておくことが重要と考えられます。


お見逃しなく!
M&A 契約においては、アーンアウト条項の他にも様々なリスクに対応するために特別補償条項や価格調整条項等が設けられることがあります。それらが実行された場合の会計上・税務上の取扱いを事前に確認しておくことはM&A リスクコントロールにおいて極めて重要と考えられます。

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