東日本大震災による原発事故により、日本は深刻な電力供給問題を抱えることになりました。このような中、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」(以下、「再生可能エネルギー法」)の施行(2012年7月1日)による全量買取制度を控え、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー分野への新規参入が期待されています。
1. 買取制度の概要
再生可能エネルギー法は、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気について、原則としてその全量を、一定の価格で、一定の期間にわたって、電気事業者が買取ることを義務づけています。
当初参入に名乗りを上げるのは大企業が中心でしたが、全量買取制度を背景として安定した収益が見込まれることから中小企業に裾野が広がってきています(日経新聞3月28日)。
太陽電池の価格の下落による発電コストの低下によって、特に太陽光発電が注目されている一方、低コストを強みとする中国勢との激しい価格競争の結果、太陽電池各社の業績は急速に悪化しています。中国最大手のサンテックパワーは2011年12月期に10億ドル(約800億円)の赤字を計上することになりました。ドイツ大手Qセルズは4月2日、法的整理の手続きを申請すると発表しました。最大市場の欧州での販売が債務危機を背景に低迷。次の主戦場は日本と見られています。
2. 普及に向けて
買取制度では買取費用を最終的には電気使用者に負担させることになります。すでに原子力発電所の稼働停止に伴う電気料金値上げの動きがある中で、今後の注目点は電気料金の上昇幅となります。
資源エネルギー庁資料「電気料金の各国比較について」によると、買取制度を導入したドイツやイタリアでは2000年代後半にかけて電気料金が急騰しています。ドイツではメガソーラーの建設が加速した2009年以降、家庭への価格転嫁が3年間で3倍に急増しました(日経新聞3月28日)。その後、ドイツ政府は買取価格を引き下げ、買取量も制限すると発表。価格競争が加速したことで多くの太陽電池メーカーが経営破たんしました。スペインでも同様、政府が買取価格を大幅に引き下げると、導入量が激減し、多くの倒産や失業をもたらしました。
4月23日、太陽光で発電した電気の買取価格を1キロワット時あたり42円、買取期間を20年前後とする見通しとの報道がありました。諸外国の経験を踏まえると、再生可能エネルギー投資が過熱した場合に早い段階で買取価格を引き下げるルールを設定し、高い電気料金を負担する国民にも配慮をする必要があるでしょう。
2. 税制もバックアップ(平成24年度税制改正)
平成24年度の税制改正法が3月30日に成立しました。再生可能エネルギー法に規定する認定設備で一定のものについて、平成24年7月1日から平成25年3月31日までの間に設備の取得をしてその取得の日から1年以内に事業の用に供した場合には、取得価額全額の即時償却ができることとなります。
お見逃しなく!
輸出産業で競合する韓国と比べれば2.5倍とされる日本の電気料金。韓国では発電コストの安い原子力発電や石炭発電の比重が高いという事情もありますが、最大の原因は、韓国政府がインフレを抑制するために適正価格を下回る料金を設定していることにあります。そのため常に電力需給は逼迫しており、昨年9月には大規模停電が発生しました。日本の産業の国際競争力を高めるためには、太陽光発電の全量買取制度での普及によるコスト上昇を省エネ投資などで吸収する必要もありそうです。