税理士コラム

暗号資産(仮想通貨)の進歩と実務対応

2021 年 4 月 14 日、暗号資産(仮想通貨)交換所大手の米コインベース・グローバルがナスダックに上場となりました。業界で初めての株式市場上場となります。

暗号資産の進歩

暗号資産の代表であるビットコインは 2008 年にサトシ・ナカモトの名義で発表された論文に基づき、2009 年に使用が開始されました。その後、2014 年にはビットコイン取引所運営会社である株式会社 MTGOX の経営破綻、2017 年から 2018 年にかけての暗号資産バブル、2018 年から2019年にかけての国内暗号資産交換業者における暗号資産流出事故などを経て、近年では多くの企業や各国の中央銀 行が暗号資産に関連する検討を進めています。
このように様々な事件が起きる中で暗号資産は急速に進化、普及してきた一方で、暗号資産は従来存在しなかったデジタル資産です。従来の法律・会計・税制をどのように適用すべきか必ずしも明らかでないケースも多く、実務上の取扱いの整備が求められます。

暗号資産に対する金融規制

2019 年の資金決済法改正において、仮想通貨から暗号資産へと呼称が変更されました。暗号資産の売買や交換等については、資金決済法の規制対象となります。
暗号資産の売買等のサービスを行うためには、暗号資産交換業者として内閣総理大臣の登録を受ける必要があります(資金決済法 63 の 2)。暗号資産交換業者については、広告規制、利用者財産の分別管理義務、取引時の本人確認義務など、広範に渡る規制が課されています。さらに暗号資産交換業者は、財務諸表監査と分別管理監査を受ける必要があります。

暗号資産に関する会計

企業会計基準委員会は、2018年3月14 日に「実務対応報告第38号 資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い」を公表しました。本実務対応報告により、保有する暗号資産に関する各種会計処理が明らかとなりました。例えば、企業が購入して取得する暗号資産については、期末に保有する暗号資産に活発な市場が存在する場合には、市場価格に基づく評価を実施します。すなわち、ビットコインやイーサリアムなどの活発な市場が存在する暗号資産については時価評価となります。
一方で、本実務対応報告では、自己の発行した暗号資産については、報告対象から除外することが明記されています。すなわち、新規暗号資産の発行によって資金調達する方法である ICO(Initial Coin Offering)や IEO(Initial Exchange Offering)に関する会計処理は何も示されていないです。

暗号資産に関する税務

国税庁は 2018年11月に「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」を発表し、2019年12 月、2020年12 月に改訂が行われました。本 FAQ では、所得税、法人税、相続税、消費税などの各種税目について基本的な取引の見解が示されているものの、会計と同様に自己が発行した暗号資産に関する見解は示されていないです。なお、法人が期末に保有する暗号資産で活発な市場が存在する暗号資産については、会計と同様、時価評価とすることが示されています。
日本では暗号資産交換業者に対して金融機関に準じる規制体系が整備された一方、発行者に関する金融規制、会計、税制の整備が遅れています。発行者に対する透明性確保のルールを整備することで、暗号資産市場全体が進化し、更なる安定性の向上を期待します。

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