税理士コラム

新しい事業承継税制

2015年から2020年までに約30万人の中小企業経営者が新たに70歳に達するにもかかわらず、その6割が後継者未定の状態(中小企業庁「税制改正要望」)であることから、経営者の世代交代を集中的に進めるための対策として事業承継税制(非上場株式等についての贈与税・相続税の納税猶予及び免除)の特例制度が創設されました。
この特例は、10年間の期間限定で贈与税・相続税の負担なく非上場株式等を次世代に承継することができる制度(資産保有型会社に該当する資産管理会社など一定の会社を除きます)であり、これまであまり活用されてこなかった事業承継税制が、オーナー経営者の事業承継対策を考えるうえで重要な選択肢の一つとなることが予想されます。

既存の制度が活用されなかった理由

平成21年度に創設された従来の制度は、対象となる株式が発行済議決権株式総数の3分の2に達する部分までに限定され、猶予される税額も課税価格の80%に対応する部分のみであったことから、実質的に株式の53%部分しか納税猶予を受けることができませんでした。申告期限後5年間の平均で8割の雇用確保が必要とされる雇用確保要件や、株式を継続保有しなければならない要件が存在し、その要件を満たせなくなった場合には、猶予されていた贈与税・相続税とそれに対応する利子税を納付しなければならないことが事業承継税制の利用を躊躇させる大きな要因となり、制度創設以来8年間での認定件数は1,969件に留まっていました。

時限立法により経営承継を促進

新しい事業承継税制は、2018年1月1日から2027年12月31日までの10年間に承継を行う者を対象として、①対象株式数の拡大、②納税猶予割合の拡大、③対象者の拡大、④雇用確保要件の弾力化、⑤事業の継続が困難な事由が生じた場合の減免制度といった内容の拡充が行われました。特例は10年間限定で、その期間中に先代経営者からの贈与・相続が行われる必要があります。相続は時期をコントロールすることが困難であるため、10年間のうちに贈与による承継を行うことを前提に、承継計画を検討することが求められます。

区分既存制度特例制度
対象株式数議決権株式の3分の2が上限贈与・相続で取得した全株式
納税猶予割合贈与時100%、相続時80%贈与時・相続時いずれも100%
贈与者(先代経営者) 代表者であった者からの承継のみ代表者以外の者からの承継も対象
受贈者(後継者) 代表権を有する1人への承継のみ代表権を有する3名まで承継可能
雇用確保要件を充足できなかった場合猶予税額を全額納付納税猶予が継続(都道府県知事に理由を報告)

お見逃しなく!

事業承継税制の適用を受けるためには、制度開始から5 年経過後の2023 年3 月31 日までに認定経営革新等支援機関(税理士・金融機関等)による所見を記載した「特例承継計画」を策定し、都道府県知事に提出・確認を受ける必要があります。
特例承継計画には、特例の適用を受ける予定の後継者(特例後継者)の氏名を記載する必要があります。都道府県知事の確認後も特例後継者の変更を行うことは可能ですが、贈与または相続の時に特例後継者として記載されていない者は特例の適用を受けることができませんので、提出期限である2023 年3月31 日までに後継者を決定することが必要となります。

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