世界の太陽光発電市場が急拡大しています。米調査会社IHSによれば、2012年に32万キロワット(Kw)だった発電規模が、今後5年間で約2倍に拡大する見通しです。日本でも、2012年7月に、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が始まり、全国各地でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設ブームに沸いています。
1. 外資の日本市場参入と融資環境
ドイツの太陽光発電事業者PVDP社による、長崎・五島列島で総事業費900億円の国内最大級のメガソーラーの建設が報道されました(日本経済新聞2013年4月14日)。海外企業による日本への太陽光発電事業への参入が急増しています。日本のFIT買取価格が、ヨーロッパ各国と比較して割高なため、投資の期待収益・リターンが十分に確保できると判断したようです。
銀行の太陽光発電ビジネスへの融資の環境も拡大しています。大手行が実施した2012年度のメガソーラー向け事業融資額は1000億円規模に達したとのこと。昨年50億円の融資に過ぎなかった三井住友銀行では、検討中の再生可能エネルギー案件だけでも1500億円規模を見込んでいる模様です(日本経済新聞2013年4月8日)
2. 買取価格の今後
FITは、再生可能エネルギー源(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、国が定める固定価格で、一定の期間、電気事業者に調達を義務づけるものです。
再生可能エネルギー法施行後2年目の2013年の太陽光(10Kw以上)の買取期間は20年間で据え置かれていますが、一方で、買取価格は10%引き下げられました。(1Kwあたりの買取価格 2012年:42円(税込)→2013年:37.8円(税込))
米Bloomberg New Energy Financeの分析によれば、2013年3月時点の太陽電池モジュールの平均価格は、1w当たり0.81ドル。1年間で2割近く下がっています。ドイツでは、資材調達コストが急速に値崩れしたため、FIT買取価格を、遡及的に引下げる議論が高まっています。一方、日本では、太陽光普及・FITと引き換えに、電気利用者に対して、再生可能エネルギー賦課金として電力価格へ転嫁しています。政府は、太陽光発電の資材調達コストの下落・発電力の改良のスピードに合わせて、素早く段階的に、買取価格・買取期間を見直さなければ、電気利用者の反発を生むばかりか、国内事業者の国際競争力の低下を招きます。
3. 環境関連投資促進税制も延長
2013年度の税制改正により、環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)が変更されました。太陽光発電装置はじめ再生可能エネルギー法に規定する一定設備の取得価額の全額を即時償却できる特例の対象期間は、2015年3月31日まで2年間延長されました。
お見逃しなく!
米国のシェールガスの増産ブームや、ドイツのFIT電力価格上昇による太陽光投資の抑制の呼びかけなど、世界的にみれば再生可能エネルギーの事業環境が厳しくなることも予想されます。一方、日本国内では、北海道や九州地区を筆頭に、メガソーラーの建設・誘致ラッシュにあわせて、固定資産税や賃料収入を見込んだ地方自治体による税・補助金などの優遇策の整備、果ては太陽光発電関連の教育機関建設誘致まで、周辺ビジネスも巻き込んだ地域活性化への起爆剤としての取組みが拡がってきています。