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年金問題と経済活性化 確定拠出年金の普及がもたらすもの

1. 年金をめぐる将来の不安

 予想以上の速さで少子高齢化が進む日本。長くなる老後に年金の不安がつきまといます。社会保障と税の一体改革法案で消費増税を決めたのは公的年金制度の話。一方、厚生年金基金受託者の虚偽の運用報告と年金資産消失のAIJ問題は企業年金の話です。いずれも背景には、年金財政の悪化があります。

 一般に「日本の年金制度は3階建て」と説明され、1階(国民年金)及び2階(厚生年金、共済年金等)が公的年金、3階が企業年金(厚生年金基金、確定給付企業年金)等の私的年金という構成になっています。人口動態や経済環境の変化等により財政基盤の維持が困難である点は、すべての階に共通した問題といえます。

2. 「3階」部分の果たす役割は?

 3階部分は公的年金を補完するものですが、主たる公的年金の給付水準が低下するに伴い、老後の生活保障に果たす役割は増大しつつあります。一方、3階部分の代表である企業年金には、不況に伴う財政悪化から積立不足等の問題も生じたため、2001年より確定拠出年金(日本版401K)が導入されました。企業にとっては拠出のみで積立不足が生じないことが退職給付債務の負担軽減につながり、また、個人にとっては個人勘定への積立てにより転職時の年金資産の移換(ポータビリティ)が確保されるなど、確定給付型との違いに期待が集まりました。しかし、米国の401Kが確定給付型を加入者数・資産残高共に上回るのに対して、日本の確定拠出は開始からまだ10年とはいえ、その規模は確定給付70兆円に対し、確定拠出5兆円と低位です。さらなる普及のためには2012年1月開始のマッチング拠出(事業主の掛金に従業員が上乗せ拠出)の限度額や加入対象者の拡大等の制度改革が必要との声もありますが、確定拠出年金の普及・規模拡大の果たす役割は、公的年金の補完、企業負担の軽減に留まりません。

3. 自助努力意識の醸成と経済活性化への貢献

 米国では確定拠出年金の運用は投資信託が中心であり、一方で株式・社債の発行残高に占める投信による保有分は増加の一途です。こうして、拡大した投信を通じた株式・社債へのリスク・キャピタル供給の増加が、企業や社会の成長を資金面で支える構図が形成されました。また、自ら運用する確定拠出年金は、国民に将来のお金の問題は自分で管理すべきと認識させ、自助努力の意識が根付きました。

 成熟社会のあり方として、各人が資産形成に対する権利と責任を認識し自立する結果、投信等の何らかを経由するというワンクッションを置いたとしても、預金中心の安全運用から成長分野への積極的な投資へのシフトが進み、それが経済の活性化に寄与するという好循環を生む構図が描けると、年金問題だけでなく、日本の将来にも希望が持てるのではないでしょうか。

 7月に政府が策定した「日本再生戦略」では、確定拠出年金の普及・拡充に向けて一層の検討や措置等が予定されています。確定拠出年金には、上述した企業型のほかに個人単位で契約する個人型もあり、このような制度改革を好機として、企業年金制度や個人の年金について一考する価値はあるでしょう。

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