2009年12月に施工された中小企業金融円滑化法(以下、「円滑化法」といいます。)は、当初2011年3月までの時限立法でしたが、東日本大震災の影響などを勘案して2回の期限延長を経て、2013年3月末で期限切れとなります。円滑化法は、当初モラトリアム法とも呼ばれたとおり、金融機関に対し、債務の弁済に支障を生じており又はそのおそれのある中小企業者の負債返済をできる限り猶予することを義務づけるものです。(同法第4条第1項)
1. 倒産件数
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | |
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企業倒産件数 | 15,480件 | 13,321件 | 12,734件 | 12,124件 |
(出典:株式会社東京商工リサーチ)
2009年以降の倒産件数は減少傾向を示しており、同社データによると、2012年は過去20年間で最少件数となりました。法律上は金融機関に対して努力義務を課しているにすぎませんが、円滑化法は中小企業の資金繰り緩和に一定の効果を見せたと言えます。
また、同社発表によると、中小企業金融円滑化法に基づく返済猶予の申込件数のうち、住宅ローンを除く中小企業向け申込件数は約390万件(2012年9月末累計実績)でした。これに対して、2012年8月20日の日経新聞によると、「金融円滑化法を利用したのは40万社程度」と記載されています。さらに、国税庁公開データによると法人税申告件数および個人事業者の消費税申告件数の合計は約397万件(平成23年事務年度)とされていることから、中小企業者数約397万社のうち、約10%にあたる40万社が円滑化法を利用し、1社あたり10件近くの申し込みをしているという計算となります。例えば1社が3行に対して3回の条件変更を申し込んでいるものと想定できます。
これらの資産からもその廃止による影響が懸念されます。円滑化法を利用した40万社のうち、仮に1割が倒産しただけでも過去の倒産件数推移からして大問題となります。
2. 地域経済活性化支援機構
2013年1月31日、政府は株式会社企業再生支援機構法の一部を改正する法律案を閣議決定し、国会に提出しました。法律案では企業再生支援機構を「地域経済活性化支援機構」に名称変更した上で、2013年3月までとなっている支援決定期間を5年間延長します。加えて、民間の再生ファンドにも出資することを可能にします。支援決定企業については、中小企業の場合は非公表とすることで、信用リスクを懸念する中小企業に配慮します。同機構には円滑化法終了後の資金面でのセーフティネットとしての役割が期待されます。
3. 中小企業経営力強化支援法
「円滑化法で借金の返済猶予を受けた企業の経営再建はほとんど進んでいない。中小企業の競争力をいかに引き出し、安定した経営基盤をつくれるかが課題になる」(日経新聞2013年2月4日)。
このような課題に対応するべく、政府は2012年8月30日に施工された中小企業経営力強化支援法に基づく認定支援機関の活用により、事業計画の策定、海外展開時の資金調達、信用保証料の引下げを行う方針です。中小企業の再生・経営改善を支援することにより抜本的な解決が期待されます。
お見逃しなく!
1月29日に閣議決定された2013年税制改正大綱においても、中小企業再生を支援する措置が盛り込まれました。再生ファンドが中小企業への債権を放棄しやすくするとともに、認定支援機関を活用して行う設備投資について優遇措置が設けられる予定です。