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株主からのガバナンス

1. 株式市場の低迷

2011年12月29日の日経平均終値は8,455円と29年ぶりの安値をつけました。
2011年のIPO件数においても、前年の22社より増加したものの37社と低迷しています。さらに、親子上場の解消やMBOにより上場会社数は1年間で53社減りました(2012年1月12日日本経済新聞)。
低迷の理由として、欧州債務問題や歴史的な円高などがあげられますが、大株主である機関投資家等からのガバナンスが働かないこともその一つと考えられます。

2. 株式市場の役割

株式を上場している企業は、市場から資本を効率的に活用しているかどうかの評価にさらされますので、企業の成長が求められます。業績不振企業は、その株価が低迷することにより、株主から経営者の交代や再編・統合等を促されるはずです。改革ができない企業は市場から見放され、退出を余儀なくされます。逆に新たな価値を創出した企業に、資金が投下されることにより、市場は活性化します。このような株式市場の機能により、雇用の創出や消費拡大、ひいては日本経済の拡大が期待されます。しかし、現状の日本市場においては、改革の遅れにより株価純資産倍率(PBR)が1倍を割っている企業が数多くありますが、経営改革や再編等を求める声は聞こえてきません。

3. 株式市場への不信

株主から経営改革を求める声が上がらないのは、株主が日本の市場機能を信頼していないことが原因であり、以下の理由が考えられます。
①日本の上場企業は長い間金融機関と株の持ち合いしてきたことにより、株主から要求を好まない。また、株主が株主の権利を主張することに対して日本社会が良いイメージをもたない。
②近年の大型増資により既存株主が痛手を被り、投資家にとって魅力がある市場ではない。
①については、日本企業は長い間メインバンクを中心に株式を持ち合うことにより、安定株主として経営者側についてきました。その後、会計基準の変更等により持ち合いが解消する中、物言う株主が登場し世間を騒がせました。功罪はありますが、株式取得をきっかけに業界再編や業績向上に向けた取り組みが行われたこともありました。しかし、当時の世論は彼らの行動に対して否定的であったものが多く、その後に運用成績の向上を積極的に求めて行動する株主は少なくなったと思われます。
②については、リーマンショック後の株主総会を経ない大規模増資により、既存の株主は経営責任を問うことなく、持ち分が希薄化してしまいました。

4. 株主規律が働く市場へ向けての意識改革

1989年度は銀行、生保が上場企業の全体の株式をそれぞれ16%、12%所有していたが、2010年度にはそれぞれ4%、5%に低下し、代わりに外国人株主の比率が4%から27%へ上昇しました。(2012年1月6日日本経済新聞)。この状況下において、当局は独立取締役の義務付けや、第三者割当増資の際に既存株主に無償で新株予約権を付与するライツイシューなどの導入を検討していますが、規制の強化だけではなく企業の業績向上を求める株主を許容する経営者・日本社会の意識改革が必要です。

お見逃しなく!

株式市場はリスクマネーを供給し、市場機能を通じてその国の経済を発展させるためにあります。日本の証券市場において、この市場機能が働くようになれば、貯蓄に眠る個人の金融資産も株式市場に流れてくると考えます。

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