東日本大震災による影響が懸念される中、多くの企業が3月決算を迎えますが、決算発表予定日が未定という会社も多く、決算対応に支障をきたしているケースも見受けられます。
1・株主総会開催の延期
3月に開催が予定されていた株主総会が延期された12月決算法人と同様、今後も株主総会開催が延期されるケースがあるものと考えます。
法務省が3月25日に発表した「定時株主総会の開催時期について」、29日に発表した「定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて」によります と、当初予定された時期に定時株主総会を開催することができない場合には、そのような状況が解消され、開催が可能となった時点で開催すれば、会社法に違反 することにはならず、定款に定める時期よりも後になったとしても定款違反にはならないと、公表されました。
2・有価証券報告書の提出期限の延長
有価証券報告書は事業年度経過後3か月以内、四半期報告書は各期間経過後45日以内の提出が求められています。金融庁は12月決算法人などを念頭に置 き、今回の震災を受けた特例措置として、6月末までに提出すればよいこととしました。さらに、3月31日、この趣旨を3月決算法人などにも拡大し、9月末 までに提出すればよいこととする方向で、今後、政令を整備していくことが公表されました。
東京証券取引所では、決算発表について、45日以内に開示することを要請していますが、震災により速やかに決算の内容を把握・開示することが困難な場合には、時期にとらわれる必要はなく、決算内容が確定できたところで開示することを認めています。
3・震災関連費用の取扱い
震災によって発生した資産の滅失、損傷、震災関連費用等について、中には金額の合理的な見積もりが困難なものも少なくないと思われます。日本公認会計士 協会が3月30日に発表した「東北地方太平洋沖地震による災害に関する監査対応について」によりますと、損失等の見積もりを財務諸表に反映した上で、デー タ収集や会計上の見積もりの制約に関する重要な事項を注記することになります。
4月18日、国税庁は災害のあった日から向こう1年までに支出すると見込まれる災害関連費用について災害損失特別勘定に計上することで、損金算入することを認める通達を発表しました。
4・平成23年度税制改正
つなぎ法案の成立により3月末で期限切れとなる租税特別措置法の適用期限が6月30日までとなりました。一方で、平成23年度税制改正法案につきまして は、そもそもその成立が危ぶまれていましたが、3月29日、政府与党は平成23年度税制改正法案を撤回し、修正のうえで再提出する方針を明らかにしまし た。法人実効税率の引き下げや繰越欠損金制度の改正がなくなったことにより、繰延税金資産などの税効果会計にも影響が出ています。
お見逃しなく!
今回の震災によって、法の厳格な適用を行うのではなく、その趣旨に則り、定められた期日を過ぎたとしても特例措置として法や規則の違反にはならないという 取扱いの通知が各官公庁等から次々と発表されています。実務におきましては、被災された方々や株主への配慮等、平時にない対応が求められると考えます。
日本弁護士連合会・日本公認会計士協会・日本税理士会連合会では災害復興支援活動として、震災対応無料相談・無料派遣窓口を設けています。