政府は1月14日に、2015年度税制改正の大綱を閣議決定しました。
大綱には、時価1億円以上の有価証券等を有する個人が、本年7月以降国外転出する際に、有価証券等の譲渡をしたものとみなして、未実現のキャピタルゲインに対して課税する旨が明記されています。
1. 租税回避行為の横行
租税条約上、有価証券等のキャピタルゲインについては、有価証券等を売却したものが居住している国に課税権があることとされています。日本から国外転出し、キャピタルゲイン非課税国の居住者となった後に、有価証券等の売却をおこなった場合には、日本及び出国先の両国で課税がおこなわれないこととなります。キャピタルゲイン非課税国への永住者は年々増加する傾向です。
出典:税制調査会 基礎問題小委員会 BEPS行動計画に関連する検討課題(所得税関連)
2. 国際的な租税回避への取り組み
出国時課税制度は日本独特の制度ではありません。OECD(経済協力開発機構)は、行き過ぎた租税回避行為を防ぐための対策として、15項目からなる「BEPS行動計画」を昨年9月に公表し、G20で支持されました。BEPS行動計画「6 租税条約の濫用防止」において、租税回避防止のための国内法(出国時課税制度等)が租税条約との関係で確実に適用できる措置を講じることとされています。
また、諸外国の制度としては、カナダやドイツでは1972年から出国時課税制度を導入しており、ほかの先進諸国においても、出国時に未実現のキャピタルゲインの課税や、出国者が引続き元の居住地国の居住者とみなされて全世界所得が課税されるなど、租税回避行為に対する対応をおこなっています。
お見逃しなく!
出国時課税は、キャピタルゲインが未実現なので担税力が不十分なため、出国時に担保の提供と、納税管理人の届出をすることによって、5年間の納税猶予制度(最長10年まで延長可)が設けられます。また、出国先がキャピタルゲイン非課税国でない場合には、二重課税の調整がされる見通しです。