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撤退の意思決定

事業プレゼンコンテスト会場で、起業を目指す若者が有名経営者から表彰され、出資を獲得する場面をビジネス番組で見かけます。まさしく、夢と希望のスタートです。一方で、全く逆の事業撤退プレゼンコンテストがテレビ放映されることは無いでしょう。一般視聴者の立場からするとそんな暗い話題は避けるでしょう。しかし、「撤退は事業を始めることよりも難しい」と思われている経営者の方は案外興味を持たれるのではないでしょうか。

なぜ難しいのか。この点について、ノーベル経済学賞(2002)を受賞したダニエル・カーネマンが紹介した損失回避の考え方でみましょう。
実験1:【利得の選択】あなたはどちらを選びますか?
・(A)確実に800ドルもらえる。又は(B)80%の確率で1000ドルもらえ、20%の確率でなにももらえない。
実験2:【損失の選択】あなたはどちらを選びますか?
・(C)確実に800ドル失う。又は(D)80%の確率で1000ドル失い、20%の確率でなにも失わない。

 実験結果は、多数の被験者が、実験1では利得の確定となる(A)を選択し、(B)の賭けを回避し、実験2おいては(C)の損失の確定を避け、(D)の賭けを選択したということです。
この実験結果の示唆することは、人は、利得だけを考える場面においては確実な利益を(リスク回避)、損失のみを考える場面においては、賭け(リスク追求)を選択するというものです。

 事業の撤退で考えれば、次のような選択に直面している状況において、経営者は2番目を選択する傾向があり、撤退を「難しい」ものにしていると考えられます。
 ・今、すぐに撤退する決定をすれば、損失額が確定してしまう。
 ・事業を継続すれば、追加損失が出る恐れは高いかもしれないが、利益がでるかもしれない。

先の簡単な実験と事業の撤退と同じレベルで論じるのは、如何なものかと思われるかもしれませんが、経営者の方が事業撤退の意思決定に直面した時には、ひとつの教えになるのではないでしょうか。

お見逃しなく!

先ほどの議論は、過去の行動に引きずられる要因は考慮していませんが、例えば、過去に投下した経営資源に引きずられて意思決定することもあります。経営学においては、既に投下し、回収できない資金や費用のことを埋没費用と呼びます。そもそもこの埋没費用は、将来の意思決定に影響は及ぼさないはずですが、これまでの努力が無になるのを避け、事業を継続してしまうという意思決定は、埋没費用の呪縛なのかも知れません。

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