平成27年10月から国民一人一人に12桁のマイナンバーが通知され、平成28年1月より、社会保障・税・災害対策の行政手続において利用されます。行政機関の間で互いに個人情報の照会・提供を行うことにより、「行政機関から真に手を差し伸べるべき者を見つけることが可能になること」や、「社会保障や税に係る各種行政事務の効率化が図られること」が期待されています。将来的には、インターネット上で自分自身の個人情報の確認や行政手続を行うマイ・ポータルの設置が予定されています。
法人については国税庁が付番し、インターネット上において公開される予定です。
1. マイナンバー導入の背景
マイナンバーの導入については、古くは1984年の導入直前に頓挫したグリーンカード、2002年に開始した住民基本台帳ネットワークの時にあったような、プライバシーに対する懸念、国民の管理に対する反対の声は現状あまり聞かれません。背景には国民と政府の意識の変化が挙げられます。
具体的には「宙に浮いた年金問題」や生活保護費の不正受給など、近年社会保障関連における不祥事が相次いだことにより、公正な社会保障給付のためには、正確な所得などの各種情報が必要との認識が国民の間に広がってきたのではないかと推測します。同時に政府においても、制度の目的として従来の高所得者の財産捕捉から、国民生活の利便性向上へと大きくかじを切ったことが制度を導入できた大きな要因といえます。
2. 企業における個人番号の利用場面
企業は主として以下の情報を行政機関に通知しますので、通知の際には従業員・取引先からマイナンバーの取得が必要となります。
■税分野
1.給与所得の源泉徴収票
2.退職所得の源泉徴収票
3.報酬等の支払調書
4.配当等の支払調書
5.不動産の使用料等の支払調書
■社会保障分野
1.従業員の健康保険組合に関する事務
2.従業員の企業年金に関する事務
3. フローの把握からストックの把握へ
マイナンバーの付与対象として検討されているものに、預金口座、不動産があります。ただし、預金口座については金融機関の付与コストの問題、不動産については実際の登記が本当の所有関係を示していないという課題があり、検討中となっています。諸外国においてストックにナンバーが付与されているのは、イギリスの株式、フランスの預金口座くらいであり(国税庁「税制調査会(マイナンバー・税務行政DG①)」より)、実現へのハードルは高いといえます。
金融資産・不動産に付番されるということは、富裕者層の資産も把握できるということもあり、資産課税における利用も想定できます。
お見逃しなく!
マイナンバー制度の導入により所得把握の精度が向上します。個人の正確な所得が把握できれば、適正な社会保障給付が可能になるだけでなく、例えば今後見込まれる消費税増税による逆進性を解消するために給付付き税額控除制度の導入が可能になります。給付付き税額控除制度とは、アメリカ・イギリスなどの諸外国においても導入されており、低所得者層に対して税額控除で控除しきれなかった残りの枠の一定割合を現金で給付する制度です。