最近、大戸屋、出光興産、クックパッド、セコムなど会社の大株主である創業家と、経営陣が経営方針や人事で対立する事例が増えています。日本では創業家が大株主となっている上場企業は数多く存在します。このような大株主の存在が、他の株主からの短期的な利益要求の圧力を弱め、会社との長期的な連帯関係により企業の発展を支えてきたといわれていますが、なぜこのような対立が増えたのでしょうか。
1. コーポレートガバナンスの強化
2015年6月よりコーポレートガバナンス・コードが導入され、企業価値の向上・ステークホルダーに対する透明性の確保などにより、コーポレートガバナンスの強化が求められるようになりました。特に独立社外取締役を多くの上場企業が導入したことにより、社長の独断や、創業家への配慮といった身内の論理が通用しない環境になってきました。
また、公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による日本株運用比率の引き上げ、日本銀行による指数連動型上場投資信託受益権(ETF)の購入の拡大により、株式市場の公的な色合いが濃くなってきています。さらに、来年からは個人型確定拠出年金の導入が予定されており、株式相場の動きに対する国民の関心も高くなっています。
2. 創業家側の事情
創業家側にとって上場企業の大株主であっても、非上場企業の創業家と同様に後継者問題、相続対策、理念・信条の承継など様々な問題を抱えています。世代交代が進み、株式を保有する家族が増えたとしても、創業者の理念・信条をもとに結束している創業家は少なくありません。しかし、最近の対立の要因の一つに、その「創業者の理念・信条」が会社と共有できていないと創業家が感じていることがあります。
時代や経営環境の変化、コーポレートガバナンスの強化により、会社が創業者の理念や基本原則などの価値観を共有し、承継することが難しくなってきます。また、世代交代時のコミュニケーション不足のため、創業者の理念・信条について互いに確認する場面が少なくなっています。
普段から会社の経営陣と大株主である創業家とのコミュニケーションがとれていれば、大きな対立となることは少ないと思われます。コミュニケーション不足による感情的な対立となってしまうと、合理的な解決は難しくなります。
お見逃しなく!
時代や経営環境の変化に応じて、コーポレートガバナンスの考え方も変わってきています。株式市場にますます透明性が求められる昨今、対立が表面化し、広く報道されることになれば、思わぬ形で企業価値を毀損することになりかねません。創業家・経営陣ともに会社の発展を第一に考えていることは間違いありません。対立を未然に防ぐために、互いの真摯な対話が求められています。