2017年4月より消費税率が現状の8%から10%への増税が予定されています。それに伴い軽減税率の導入をめぐり政治的な駆け引きが活発化していますが、9月に財務省より発表されたマイナンバーカードを使った還付案については、評判が悪く結局は飲食料品への軽減税率導入に落ち着きそうな情勢です。議論はすでに軽減税率の対象となる品目に移っています。
1. 社会保障と税の一体改革
消費税の増税は社会保障財源として導入が決められたものであり、軽減税率を導入することは、子育て支援や医療・年金・介護サービス等に回される財源が減るということを意味します。与党の税制協議会の試算によると、酒類を除く飲食料品に対して軽減税率を導入する場合、1%あたりの減収額は6,300億円になるとのことです。(出典:2014年6月5日与党税制協議会「消費税の軽減税率に関する検討について」)
また、軽減税率については、低所得者層への配慮という意味では大変わかりやすいというメリットがありますが、高所得者にも減税となることや軽減税率の対象品目の選別について、政治的な利権が生じる可能性があるといわれています。
2. 複数税率の導入に向けての対応
財務省は複数税率の導入時にはインボイス方式の導入を求めています。例えば、EU型のインボイス方式は事業者番号、請求書番号、適用税率別の請求額等を請求書に記載することにより、正確な消費税の転嫁が行われ、免税事業者はインボイスを発行することができないため益税が生じません。事業者の事務負担が増えますが、複数税率が導入される場合、取引ごとに正確な消費税が転嫁され、透明性が担保されるインボイス方式の導入は、国民の消費税に対する信頼性を高めるためにもいずれ必要になると考えられます。
3. その他の選択肢
あまり知られていませんが、消費税率が5%から8%に増税されたとき、住民税が非課税となっている人に対して、その負担を和らげるため「臨時福祉給付金」が創設されました。
今後はマイナンバーが導入され、より正確な個人の所得が把握できることから、現状の「臨時福祉給付金」を発展させた「給付付き税額控除制度」の導入を求める声もあります。この「給付付き税額控除制度」とは、例えば、子育て支援や就労支援等を目的として、税の仕組みである税額控除と、給付の組み合わせにより低所得者を中心に支援を行う仕組みのことをいい、アメリカ、イギリス、オランダ、カナダなどの先進国において導入されています。
お見逃しなく!
少子高齢化に伴う社会保障費の増加に対して、何らかの財源が必要なのは議論の余地はありませんが、全ての国民に痛税感が伴う消費税の増税は容易なものではないようです。一方で、給与等から徴収される社会保険料は毎年少しずつ料率が上がっているものの、それほど議論にはなっていません。今後増加する社会保障費を誰が、どのように負担するかという根本的な議論が再度必要ではないでしょうか。